楽器が弾けない?音楽系企業で働くのに?──それって“恥”ですか?

「えっ、楽器できないんですか?音楽の会社勤めてるのに?」

この手のセリフ、言ったことはなくても、顔に出てる人、結構います。実際、仲間内(社外)の雑談で聞こえてきたこともあるので、まぁ、人間なんてそんなもんでしょう。

でもね、結論から申し上げますと──恥ではございません。まったくもって、これっぽっちも。

いや、もちろん弾けたほうがいいですよ?場の空気が和みますし、楽器メーカーの展示会でちょっと触れたら「おっ!」ってなる。でも、できなきゃできないで、何も問題ない。はい、それだけの話です。

音大卒から見ても、別に気にしてません。

私は某音大を卒業しまして、現在はとある音楽系企業に勤めております。社内に音大出身者もいれば、音楽経験ゼロの人もいます。でも、不思議と業務には支障が出ないんですよね。

というのも、仕事で評価されるのは「演奏スキル」ではなく「仕事スキル」だから。メールをちゃんと返す、納期を守る、提案が的確、商談で感じがいい、電話でトラブルを鎮火させられる──こういうことのほうが100倍大事です。

「いや、でも音大生のほうが有利じゃないですか?」

それ、企業によります。ほんとうにピアノが弾ける人材が必要な現場もありますし、ただ楽譜を見て“ああショパンですね”って相槌を打てるレベルでいい場合もあります。もっというと、「楽器弾けないけど、営業めちゃくちゃ上手い人」のほうが求められる部署だってあるわけで。

ただし──口は回ったほうがいい。

「音楽わからないけど、やる気だけはあります!」というのも、それはそれで潔いです。でも、実際の現場では、楽器が弾けなくてもお客様や取引先とスムーズに会話を合わせられる人のほうが圧倒的に重宝されます。

相手が「高校のとき吹奏楽でユーフォやってたんです〜」と言ったときに、「ユーフォって……なんでしたっけ?」となると、まあちょっとね。せめて「金管で柔らかい音の出るアレですね!」くらいは言えるようにしておいたほうが無難です。

これ、知識じゃなくて気遣いの話なんです。音楽に精通してなくても、「話を聞いてあげる、合わせる」ってスキルは、訓練できます。むしろ楽器をやってないからこそ、それを磨くべきなんです。

個人商材扱う人や専門職は…そりゃあ、ね?

もちろん例外もあります。たとえば、2〜3人でやってる楽器工房系の会社。バイオリンやリード、録音機器などコアな商材を扱っているようなところは、やっぱり知識がないと話になりません。マウスピースの違いもわからないでカタログ片手に「このへんどうですか?」なんてやってたら、即アウト。

あと出版社の専門編集職もそう。楽譜の読み書き、曲目の背景知識、演奏者のこだわりなど、ある程度理解がある前提で進むことが多いです。ここで「リヒャルトとロベルトって、別人なんですか?」とか言い出すと…まぁ、場の空気が凍ること請け合いです。

大手には、そもそも“音楽愛”すら怪しい人もいる

これは言い過ぎ?いえ、わりと本当の話です。

大手音楽系企業には「音楽が好きだから」というよりは、この会社の看板で働きたかったというタイプの方もいらっしゃいます。音楽にそこまで興味はないけれど、ネームバリューで選んだというケースですね。

正直、そういう方のほうが出世が早かったりもするんですよ。なぜなら彼らは「仕事ができる」から。会議のファシリテーションが上手い、ロジックで物事を整理できる、プロジェクト管理が得意。うーん、悔しいけど、認めざるを得ません。


楽器商には“一芸特化型”の猛者がいる

さて、もうひとつ面白い例を挙げておきましょう。

楽器商の営業職です。そう、ピアノ屋さんやギター屋さん、サックスやバイオリンを売ってるあのジャンル。ここ、ちょっと独特の世界観がありまして──

音大を出てるかどうかはあまり問われないんです。むしろ「音大って何それ?」みたいな人が、異様にギターに詳しかったり楽器の調整が上手だったりします。

で、そういう人たち、だいたい一曲だけめちゃくちゃ上手に弾けるレパートリーを持ってます

「え?それだけ?」と思うかもしれませんが、そこに意味がある。たとえば、「お客様、このモデルは低音がすごくまろやかなんです。実際に聴いてみてください」って言いながら、ポロンと1フレーズ。その音が良すぎて、つい買ってしまう人、けっこういます。

あの“営業デモ演奏”って、ただの技術ではなくて、一種のプレゼンなんですよね。営業トークの一部。だから、音大出てなくてもいい。でも、自信なさげにしちゃいけない。むしろ、「俺はこれが弾きたいから弾く。以上!」くらいのメンタリティの人のほうが、意外と信頼されたりする。

でも当然ながら、プロの演奏家と比べると粗が目立つわけで──そこはわきまえて、“この一曲(というか1フレーズ)だけは、録音でも誤魔化せないレベルで仕上げる”という努力をしているわけです。

なので、もしあなたがこれから楽器商の営業職を志すならば、無理に全方位うまくなる必要はありません。一撃必殺の1フレーズを極めて、勝負する。 それで充分です。というか、ほとんどの現場では、それで足りてます。

まとめ:弾けなくても恥じゃない。でも、喋れなきゃツラい。

楽器が弾けないことは、別に恥ではありません。ただし、“喋れない・合わせられない・学ばない”の三拍子が揃うと、厳しくなるそれはもう、音楽に限らずどの業界でも同じでしょう。

演奏ができなくても、人と音楽を繋ぐ仕事はできます。そのためには、最低限のリスペクトと、ちょっとした努力と、そしてたまにブラックコーヒーでも飲んで冷静になる時間が必要かと思います。

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