音楽業界がダメでも、どうかヤケにならないでほしい。



就活中、ある営業会社の集団面接で、小柄な男と一緒になったことがある。
声は小さくて、礼儀正しい、控えめな雰囲気の人だった。話しているうちに「小さい頃からピアノをずっと続けてきた」と教えてくれた。音楽が本当に好きで、音楽に関わる仕事がしたくて、音楽業界を志望していたらしい。

けれど、どうやらその道はうまくいかなかったようだった。
面接中、彼の表情はどこか遠くを見ているようだったし、無理をしている感じもあった。でも面接官との会話が始まると、様子が変わっていった。

「ピアノやってたんだ?それって営業にも向いてるよ」
「コツコツ練習するの得意でしょ?うち、そういう人求めてるんだよね」

ありきたりな言葉。でも、彼は少しずつ表情を和らげて、頷いていた。
あのときの光景が、今でも忘れられない。


音楽業界が難しいのは事実。でも、だからといって“なんでもいい”にしないで

音楽業界の就活は、とにかく狭き門だ。コネや運の要素も大きいし、採用人数も圧倒的に少ない。「音楽が好き」という気持ちだけではどうにもならないことが山ほどある。
筆者も業界を目指した一人として、そこは痛いほどわかる。(株式会社ナージは、コネ入社はありません)

でも、だからといって「もうどこでもいい」「何でもいいから内定がほしい」と思ってしまうのは、危険だ。特に気をつけたいのが、怪しげな“営業職”の求人に安易に流れてしまうこと。


「営業職」自体が悪いわけではない。でも、気をつけるべき“会社”は確かにある

念のため書いておくが、営業職という職種自体を否定するつもりはない。
優良企業の営業なら、やりがいも成長もあるし、スキルも確実に身につく。ただ、問題は「営業」と書かれていて、実態が“押し売りに近い訪問販売”だったり、根性論だけで人を使い潰す会社が現実にあることだ。

そういう会社は、スカウトアプリや新卒向けのサイトに“人材不足を補うため”常に求人を出している。説明会ではやたら明るくフレンドリーな雰囲気で、「うちは人を大切にする会社です」と言いながら、実際は完全歩合制だったり、ノルマ未達で罵倒されたり、休日がほとんどなかったりする。

最初は「社会勉強になるかも」と思うかもしれない。でも、そこから中途でキャリアを立て直すのは想像以上に難しい。


実際に“吸い込まれて”いく人を、就活中に見た

集団面接で会った、あのピアノの青年がその後どうなったのかはわからない。
でも、あの空気感、あの「自分を納得させようとしていた」ような表情は、今でも鮮明に覚えている。
面接官の軽い言葉に希望を見出して、「自分にも営業できるかもしれない」と思い始めていた。でも、それって本当に自分が望んだ未来なのか?

あのまま彼があの(押し売りで有名な)営業会社に入っていたとしたら…と想像すると、やるせない気持ちになる。


ヤケにならないで。今こそ、戦略を立て直すべきタイミング

音楽業界に行けなかったからといって、夢が完全に終わったわけじゃない。
むしろ、ここから“どう巻き返すか”がその人のキャリアを決める。

・音楽×IT(音楽配信、アプリ開発、SaaS)
・エンタメ×マーケ(広告代理店、イベント、アニメ業界)
・一度は一般企業で力をつけ、中途で音楽業界へリベンジするルート

世の中には、音楽の経験や関心を活かせるフィールドが思った以上にたくさんある。
「音楽業界しか見てなかったから他がわからない」と言う人も、今からでもまったく遅くない。


最後に:自分を安売りしないでほしい

音楽業界を目指すというのは、思っている以上に覚悟がいる道だ。でも、そこでうまくいかなかったとき、焦って自分を見失うのが一番もったいない。

どうか、自分を安売りしないでほしい。
「なんでもいい」は、あとから大きな後悔につながる。
そして、自分の人生は“面接官の言葉”で決めてしまうものじゃない。

あの集団面接で見た、ピアノを続けてきた青年のように。
自分を納得させるために、誰かの言葉にすがるのではなく、自分の意思で次の道を選んでほしい。

名古屋の音楽教室 

株式会社ナージ