音大卒は武器になるのか?

『「音大卒」は武器になる』(大内孝夫著)は、音大生やその親御さんたちの間で、静かに注目を集めている書籍です。
タイトルだけ見ると「音楽を学んだことがそのまま武器になる」と読み取られがちですが、実際に本書を手に取ってみると、どうやら話はそう単純ではありません。
著者の大内孝夫氏は、元みずほ銀行員。堅い金融の世界でキャリアを積み上げたあと、なんと武蔵野音楽大学の就職課へ転身し、今や音大教授という肩書きまで持つ人物です。
銀行員から音大教授へ──聞くだけでなかなかの「飛距離」ですが、こういったキャリアが成立するのは、本人の人間力と社会適応力が非常に高かったということに尽きるでしょう。
この本は、音大卒業生に向けて「音楽的才能だけでは食べていけない」という現実を突きつけつつ、その上でどう社会に通用する力を培うかを説いています。言い換えれば、「音楽はやった。でも、これからは何で勝負する?」という問いを投げかけているようにも読めます。
音大卒業生が社会で“成功”しているケースは、実はこんな人たち
音大を出た人たちの中で、社会で活躍している人の共通点を観察すると、必ずしもクリエイティブが突出していた人ばかりではありません。というより、クリエイティブで評価されているケースは意外と少数派です。
むしろ、以下のような特徴を持った人たちが結果を出している傾向があります。
・ビジネス志向が強く、動きが早いタイプ
演奏技術よりも、SNS運用や営業資料の作成に長けている。楽器を売る、副業を回す、企業とコラボする。こうしたビジネス寄りのアンテナがある人はとにかく強い。
・典型的な営業職タイプ
人当たりがよく、愛嬌があり、初対面でも相手の懐にすっと入れる。音楽を学んだというより、「よくしゃべるし、人に好かれる」ことで案件をつかんでいくタイプ。
それって音楽関係あるの?という声が聞こえてきそうですが、今の時代、“音楽家”より“音楽をネタにした営業職”の方が稼げてしまうという現実もあります。
・社会からどう見られるかに敏感な人
「音大卒業生として恥ずかしくない自分でいたい」「世の中から“音大ってすごいんだね”と言われたい」という意識が強い人は、妙に頑張ります。
“自分を大きく見せたい”というモチベーションはバカにできず、これが原動力となって資格を取ったり、肩書きを増やしたり、常に努力を怠らなかったりします。
「音大は役に立たない」とSNSで叫ぶ前に
SNSでよく目にするのが、「音大なんて行かなきゃよかった」「音大卒なのに仕事がない」といった嘆きの声です。
もちろん、そう思うのも無理はありません。音大を出たからといって、全員がオーケストラに入れるわけでもなく、教員採用試験に通るわけでもない。それは現実です。
しかし、社会の中での音大の価値をわざわざ下げてどうするのでしょうか。
音大卒が自分たちの看板に唾を吐けば、次の世代の評価も地盤沈下していくことになります。
SNSで愚痴を言うのではなく、「音大で得たものをこう活かしています」とポジティブな広報をしていく方が、たとえそれが嘘であっても、巡り巡って自分の得になるでしょう。
そしてそれができない、あるいは気づかないのであれば、「もったいない」としか言いようがありません。
「音大卒」は本当に武器になるのか?
結論として、「音大卒」は武器になります。例として、とある偏差値の一般大学よりも、同じ偏差値の音大のほうが社会的ステータスが上回るケースも多くあります。また、音大卒というのは一定の教育投資がなされた人物であることを保証するブランディングとして有効です。
なによりも、武器になるという真意として、音大で何を学んだかよりも、そのあとどう行動するかが重要になります。音楽的才能があるに越したことはありませんが、それだけで道が開ける時代でもないのです。
- 音楽をネタに人とつながれる人
- 音楽をフックに別分野と組める人
- 音大卒であることを「自分なりのブランド」に変換できる人
そうした人たちにとって、「音大卒」は立派な武器です。
つまり、“武器になるかどうか”は、あなたの使い方次第。
そしてその使い方を間違えたとき、「音大なんて意味なかった」と言ってしまう前に、自分がその武器を錆びつかせていなかったか、少しだけ立ち止まって振り返ってみてほしいのです。
名古屋の音楽教室
株式会社ナージ


